旧街道はその道を通ればなんとなく分かる。
細くて曲がっているだけではなく、ぼんやりと(あるいははっきりと)面影が残っている。
たとえば100年前と比べたら町並みは一変した。
当時の風景はほとんど残っていないように見える。
けど、実はそうでもなくて、ところどころ漏れ出るように過去の残像が顔を出している。
すべての時間は積み重なっている。
それは風景や町並みにも同じことが言える。
風景は積み重なっているのだ。
古いものがすべて新しいものに置き換わっているわけではない。
アスファルトで固められた下には土の道があり、家の下には古い時代の遺跡が眠っている。
時間を巻き戻して見ることができたとしたら、平成があり、昭和があり、大正があり、明治があり、江戸があり、室町、鎌倉、平安、奈良、飛鳥、弥生、縄文と変化していく様を見ることができる。
もちろん大きく変わっていくのだけど、同じ場所、同じ土地に違いない。
今私たちが歩いているのと同じ場所を縄文人も歩いていた。
もっと遡れば恐竜だって歩いていたかもしれない。
土地には土地が持つ記憶というものがある。
私たちはそこで暮らしている。
自分がいるこの場所は時間が積み重なってできていると認識しておいた方がいい。
足の下は死屍累々。
無数の命が積み重なって今がある。
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