オグリキャップの記憶

 34年前の今日、1990年12月23日に行われた有馬記念を覚えている。

 馬券を買うわけではなく、特別熱心な競馬ファンでもなかった私でもオグリキャップのことは知っていた。
 当時はもちろんネットなどもなく、テレビでその活躍を知っていたのだと思う。
 岐阜県笠松競馬出身の地方馬が中央に進出してエリートサラブレッドに勝ちまくるという漫画の世界を体現したような馬だった。

 その日のレースをどの程度の期待感や気持ちで見ようと思ったのかは覚えていない。
 それがオグリキャップの引退前の最終レースということも知っていたかどうか。
 でも、確かにテレビでリアルタイムで見ていた。
 そして私はあの場面を目撃することになる。


 最終コーナーを回って最後の直線で先頭に立ってからゴールするまでの時間が長かったのか短かったのか。
 ゴールしたときは、おおおおーーー!! と声を出していたと思う。
 沈黙する実況と、誰ともなく始まったオグリコール。
 17万人の歓声がうねりとなって中山競馬場を包み込んでいた。
 競馬史上、最も感動的なシーンといっていいのではないかと思う。
 テレビの前の私ですら胸熱だったくらいだから、あの日あの場所にいた人たちにとっては一生忘れられない時間になっているんじゃないだろうか。

 競馬に興味のない方は置いてけぼりになってしまうと思うので、そんな方のための動画はこちらです。


 芦毛馬なので、晩年は真っ白になっていた。
 引退後は北海道で暮らし、2010年に亡くなった。
 子供たちはついに重賞優勝馬となれなかったのも、オグリキャップらしいといえばらしい。

 時代は平成から令和へ。
 すっかり競馬にも興味を失った私はこの前の有馬記念の結果も知らない。
 でも、有馬記念と聞けば、反射的にオグリキャップのことを思い出す。
 あの映像と歓声の記憶が蘇る。
 オグリキャップと出会えた私たちはとても幸運だった。


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